あおしゅん日記

猫の手も借りられず、むしろ邪魔をされながら書いています。

パパになるまで⑤【タルトケーキと即入院】

12月に入り、嫁さんは実家への自宅安静を終えて我が家へ帰ってきていました。体調は時々悪くなるけど、だいぶ良くなってきた事もあり、職場復帰のタイミングを探っていました。

僕は繁忙期で忙しいながらも、職場の協力もあって割と早めに帰らせてもらったり、仕事と私生活を両立させて過ごす事が出来ていました。

 

クリスマスが近づいた12月の後半、嫁さんの復帰日が決まり、嫁さんは嫌がりながらも渋々職場へ赴いていくのでした。

嫁さんの職場は人手不足で仕事が忙しく、家に帰ってきて嫁さんがぐったりしている事もしばしばありました。

 

そんなこんなで復帰してから1週間程を過ごし、クリスマスイブ。

お休みだった嫁さんはクリスマスの豪華な食事を用意してくれていました。

昔懐かしの子ども用シャンパンと一緒に、美味しく楽しい食卓となりました。

そしてクリスマスケーキの時間。僕(甘党)はウキウキしながら箱を開けて中身を見ました。が、一瞬「ん?」と固まってしまいました。

今年は嫁さんが奮発してカットケーキを4つ買ってくれていたのですが、4つの内4つがタルトケーキなのでした。

 

「4つあるなら2つくらいはスポンジケーキでもいいんじゃ…」口が裂けても言えないし、言う権利もありません。

僕がすべき事は、そのケーキをSNSにキラキラさせて投稿し、美味い美味いと食べる事、それだけです。

「タルトケーキ好きなんじゃね」やんわり聞く僕に、嫁さんは頬を緩ませながら「うん!好き~」と返事をしました。

「これは明日、職場の先輩に話して笑いのネタとして消化しよう…」そう心に秘め、美味い美味いとケーキを食べ進めました。

 

次の日、僕はいつもの通り職場へ、嫁さんは検診へ向かいました。

僕はいつもの通り業務をこなし、いつもより遅めの夜の7時半ごろで帰路につこうとしていました。

そこへ、嫁さんからの電話が鳴りました。

「今日から入院する事になった。入院に必要なものを持ってきてほしい。」

あまりに突然で、ビックリし過ぎて、どんな言い方をしていたか思い出せない。

 

職場復帰をした事が災いして、切迫早産の症状である出血などの改善がなかなか見られず、2週間~4週間入院して集中的に治療・保護観察する。嫁さんから伝えられたのは、そういった内容でした。

しかも、コロナウイルスの影響で面会は不可。

 

「え、たった今から最低2週間は嫁さんに会えない?」

「え、なんの説明も準備も無しに嫁さんを入院させるの?」

「え、ただでさえ妊娠で精神的に不安定なのに、あれだけ家と猫が大好き(きっと僕の事も!)な嫁さんが完全に隔離されるって、大丈夫なの?」

え?エ?E?…色々な不安や疑問を逡巡させながら、荷物をまとめて病院へ向かいました。

 

面会は不可で院内に入る事も出来ないので、着替えや生活品の受け渡しはエントランス前で看護師さんをインターフォンで呼び出して行うとの事。

いつもは綺麗でお洒落な雰囲気すら漂う病院でしたが、この日ばかりは夜中に黒くそびえ立つ要塞のような、RPGでいう魔王の城みたいな。。

この時、まだ動揺が続いていたのか、インターフォンで自身を名乗る時に「あ、○○の彼女です!あ、いや、嫁、えっと、旦那、夫です!!」と訳の分からない自己紹介を炸裂させ、看護師さんと近くで聞いていた嫁さんの失笑を買ってしまう私。

 

とぼとぼ家に帰り、リビングで色んなことをぼんやり考えている時にふと思い出して、冷蔵庫の中を見ました。

残った2つのタルトケーキ。

「こんな事になるなら、昨日タルトケーキにケチな事を考えるんじゃなかった。素直に喜んで、もっと2人で楽しく過ごせばよかったな。」

残ったタルトケーキを見ながら、後悔の念に押し潰されそうになりました。

 

そして、僕と嫁さんにとって長い長い16日間が始まるのでした。